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ドイツ税務のアップデート2026年7月

  1. 助成金・補助金制度 2026年:企業が今知っておくべきプログラム
  2. 税務調査とタックスヘイブン:企業が今注意すべきポイント
  3. ドイツにおける持株会社の活用と税務上の留意点

1. 助成金・補助金制度 2026年:企業が今知っておくべきプログラム

革新的な企業は、研究開発税制による支援だけでなく、さまざまな補助金・融資制度を活用することができます。研究開発、デジタル化、エネルギー効率化、気候保護への投資を支援する多くの制度が用意されています。助成制度の全体像を把握しておくことで、企業はプロジェクトを大きな公的支援を受けながら進めることが可能になります。

KMU-innovativが次の募集ラウンドを開始

助成プログラム「KMU-innovativ」は、特に革新性の高い技術開発に取り組む中小企業を支援する制度です。対象となる分野には、医療技術、情報技術、気候・エネルギー、バイオエコノミー、新素材などが含まれます。

現在の募集ラウンドでは、2026年10月15日までプロジェクト概要書を提出することができます。プロジェクト概要が肯定的に評価された後、正式な申請手続きに進むことができます。なお、企業は、原則として、助成の承認を受けるまではプロジェクトを開始してはならない点に注意が必要です。

プロジェクトの内容や企業規模によっては、最大80%までの補助金を受けられる可能性があります。特に、人件費、材料費、共通費、外部サービス費、投資費用などが助成対象となります。

研究開発税制は引き続き重要な支援手段

研究開発税制は、2020年の導入以降、革新的な企業にとって最も重要な支援制度の一つとなっています。この制度は、企業の規模や業種を問わず利用でき、基礎研究、産業研究、実験的開発のプロジェクトに活用することができます。

税制優遇の対象となるのは、主に社内の研究開発担当者に係る人件費や、一定の外部研究委託費です。優遇措置を受けるためには、研究開発税制認証機関(BSFZ)による認証が必要です。

承認された研究開発税額控除は、次回の所得税または法人税の課税手続きにおいて考慮されます。控除額が確定税額を上回る場合には、その差額が払い戻されます。

この制度は、赤字企業や、まだ納税額がない、または少額にとどまるスタートアップ企業にとっても特に有用です。

2022年のプロジェクトに関する期限に注意

2022年に助成対象となる費用が発生した研究開発プロジェクトについては、重要な期限があります。必要となるBSFZの認証は、遅くとも2026年12月31日までに申請しなければなりません。この期限を過ぎて申請した場合、該当する費用は考慮されなくなります。

なお、対象となる研究プロジェクトは、早くとも2020年1月1日以降に開始されたものである必要があります。

連邦産業・気候保護助成制度が再開

連邦産業・気候保護助成制度(BIK)は、気候に配慮した生産プロセス、脱炭素化措置、研究・イノベーションプロジェクトへの投資を支援する制度です。この制度は、特に産業分野の中堅企業を対象としており、投資プロジェクトと研究開発プロジェクトの双方を対象としています。

一時的に利用できない期間がありましたが、2026年1月初めに第2回募集が公表されました。企業は、産業の脱炭素化、ならびにCO₂の回収・利用・貯留に関するプロジェクト概要書を提出することができました。助成額の上限は、モジュールに応じて、1プロジェクトあたり最大3,500万ユーロです。

一部の提出期限はすでに終了していますが、企業は今後の制度の動向を引き続き注視すべきです。助成額が大きく、産業分野における気候保護が長期的に重要な政策課題であることから、今後も追加の募集が行われる可能性があります。

エネルギー・資源効率化は引き続き重点分野

連邦経済分野エネルギー・資源効率化助成制度(EEW)は、企業のエネルギー消費量および資源消費量を削減するための投資を支援する制度です。

現行の助成指針の施行以降、助成条件は大幅に簡素化されています。特に中小企業については、新たな基礎助成により、助成金へのアクセスが容易になっています。さらに、電化、再生可能エネルギーの利用、排熱利用、グリーン水素の利用に関するプロジェクトについて、追加的なインセンティブが設けられています。

助成額の上限も引き上げられました。大規模なプロジェクトについては、現在、最大2,000万ユーロまでの助成を受けられる可能性があります。

KfWがデジタル化とイノベーションを支援

KfWは、2025年7月以降、デジタル化・イノベーションプロジェクト向けの新たなERP支援融資を提供しています。これらのプログラムは、年間売上高5億ユーロ以下の企業を対象としており、最大2,500万ユーロまでの資金調達を可能にします。

助成対象には、ITインフラ、デジタル業務プロセス、ソフトウェアソリューション、ネットワーク、ITセキュリティ、デジタル分野における従業員研修などへの投資が含まれます。

複数の助成段階が設けられているため、初期的なデジタル化の取り組みから高度なイノベーションプロジェクトまで、幅広く支援を受けることができます。

助成制度の全体像を把握することが重要

助成制度には多くの選択肢があるため、定期的に利用可能性を確認することが有益です。最初の情報収集には、連邦経済・エネルギー省の助成データベースが役立ちます。同データベースでは、連邦、州、欧州連合の助成プログラムに関する情報や、助成要件、申請手続きに関する案内を確認できます。

また、起業家や創業予定者向けにも、適切な助成制度や追加的な相談支援に関する情報が掲載されています。助成金を早い段階から事業計画に組み込むことで、企業は投資をより計画的に資金調達し、自社の競争力を持続的に高めることができます。

2. 税務調査とタックスヘイブン:企業が今注意すべきポイント

2027年以降、税務調査における新たな企業規模区分が適用されます。同時に、特定の国・地域との取引に関する税務上のルールも厳格化されています。そのため、企業にとっては、この2つの動向を正確に把握することが重要です。いずれも、税務調査リスクや税負担に大きな影響を及ぼす可能性があります。

2027年から税務調査における新たな企業規模区分が適用

企業は、税務調査の対象区分として、複数の規模区分に分類されます。この分類においては、特に売上高、利益、事業の種類が重要な判断要素となります。そして、この区分は、税務調査を受ける可能性に大きく影響します。

2027年1月1日から、税務当局の第25次調査期間が開始されます。これに伴い、連邦財務省は大規模企業に該当するための基準値を見直しました。これまでぎりぎり大規模企業に該当していた企業については、売上高や利益に大きな変動がない場合、今後は中規模企業に分類される可能性があります。

この変更は、実務上大きな影響を及ぼす可能性があります。大規模企業は、小規模な企業と比べて、税務調査を受ける頻度が大幅に高いためです。直近の統計によれば、2024年における全企業の平均税務調査率は1.6%でした。一方、大規模企業の調査率は29.6%、中規模企業は18.5%でした。小規模企業の調査率は2.7%、零細企業ではわずか0.7%にとどまっています。

したがって、対象となる企業にとっては、新たな分類により税務調査リスクが低下する可能性があります。

タックスヘイブンとの取引に関する規制強化

いわゆる非協力的な税務管轄地域との取引関係については、引き続き特に注意が必要です。その根拠となるのが、タックスヘイブン対策法です。対象となる国・地域は、税務目的における非協力的国・地域に関するEUリストを基準としており、このリストは定期的に更新されています。対象には、例えばパナマやロシアなどが含まれます。

企業がこのような国・地域と取引を行う場合、重大な税務上の影響が生じる可能性があります。一定の場合には、本来、租税条約により低い税率が適用される場合であっても、15%の源泉税が課されます。さらに、特定の取引に関連する事業費用が、税務上損金算入できなくなる可能性もあります。また、外国子会社合算課税も強化されており、これらの地域から生じる所得が、より早い段階でドイツにおいて課税される可能性があります。

加えて、文書化義務および協力義務も厳格化されています。そのため、企業は、このような国・地域との取引関係について、特に慎重に証明資料を整備し、継続的に確認する必要があります。

なぜ企業は今、自社の体制を確認すべきか

税務調査における新たな企業規模区分と、国際取引に関する規制強化の双方は、税務当局が調査・管理体制をさらに高度化していることを示しています。

そのため、企業は、自社が今後どの規模区分に分類されるのか、また既存の国際取引関係がタックスヘイブン対策法の対象となる可能性があるのかを、早い段階で確認すべきです。事前に分析を行うことで、税務リスクや追加的な事務負担を回避・軽減することができます。

3. ドイツにおける持株会社の活用と税務上の留意点

企業グループの構成をどのように設計するかは、税負担や将来の投資余力に大きく影響します。特に、複数の会社を保有する場合や、将来的な事業売却・再投資・事業承継を予定している場合には、持株会社(Holding)を活用することで、グループ内の利益を効率的に集約し、戦略的に活用できる可能性があります。

もっとも、持株会社はすべての企業にとって有利な万能の仕組みではありません。単に会社を増やせば税務メリットが生じるわけではなく、利益水準、投資計画、株主構成、将来の出口戦略などを踏まえて慎重に検討する必要があります。

また、持株会社には、株式保有を主目的とする純粋持株会社と、自らも事業活動を行う事業持株会社があります。どちらの形を採るべきかは、グループ全体の事業内容や管理方針によって異なります。

税務上の基本的な仕組み

ドイツでは、事業会社である資本会社から持株会社へ配当を行う場合、法人税上、その配当の95%が非課税となります。残りの5%は、損金不算入の事業費用とみなされ、課税対象となります。

その結果、配当を持株会社で受け取る場合の実効税負担は、概ね1.5%程度に抑えられます。これは、5%部分に対して法人税・営業税等を含む通常の実効税率が課されるためです。

一方、営業税については注意が必要です。配当について営業税上の免税を受けるためには、原則として課税期間の開始時点で15%以上の持分を保有している必要があります。この要件を満たさない場合には、法人税上は95%非課税であっても、営業税上は追加の税負担が生じる可能性があります。

なお、法人税上の95%非課税については、最低持分割合の要件は設けられていません。

個人株主に配当する場合の課税

持株会社に利益を留保している限り、個人株主レベルでの課税は発生しません。個人株主に課税が生じるのは、持株会社から個人へ配当を行った時点です。

自然人である株主が配当を受ける場合、原則として25%の源泉分離課税に各種付加税が加算されます。一定の要件を満たす場合には、部分所得課税方式が適用されることもあります。この場合、配当所得の60%が個人の累進税率で課税されます。

部分所得課税方式の適用には、通常、25%以上の持分を保有していること、または会社で職務に従事している場合には1%以上の持分を保有していることが必要です。

このように、持株会社の主な効果は、個人レベルでの課税を将来に繰り延べる点にあります。つまり、持株会社のメリットは、利益をすぐに個人へ配当する場合よりも、持株会社内に留保して再投資する場合に大きくなります。

株式譲渡益の取扱い

持株会社が子会社株式を売却して譲渡益を得た場合も、原則としてその95%が非課税となります。課税されるのは5%部分のみであるため、実効税負担は配当の場合と同様に、概ね1.5%程度にとどまります。

このため、将来的に子会社や事業会社の売却を予定している場合には、持株会社を通じて株式を保有することで、売却代金の大部分をグループ内に残し、次の投資や買収に活用しやすくなります。

ただし、10%未満の少数持分については注意が必要です。このような持分から生じる配当は全額課税対象となります。一方で、株式譲渡益については、引き続き95%非課税の対象となります。

持株会社の戦略的な意義

持株会社構造の大きなメリットは、グループ内で生じた利益や売却代金を、個人へ配当せずにグループ内に残せる点です。

例えば、事業会社で利益が発生した場合、その利益を持株会社に配当し、持株会社が別の事業への投資、子会社の買収、新規事業の立ち上げ、設備投資などに活用することができます。

また、事業会社を売却した場合でも、売却代金を個人株主に直接移すのではなく、持株会社に留保することで、比較的低い税負担で再投資資金を確保できます。

このように、持株会社は、単なる節税手段というよりも、グループ全体の資金を効率的に管理し、成長投資に回すための仕組みといえます。

活用が考えられる場面

持株会社の活用が特に検討されるのは、次のようなケースです。

  • 事業会社で継続的に利益が出ている場合 
  • 利益を個人に配当せず、再投資に回したい場合 
  • 複数の子会社や投資先を保有する予定がある場合 
  • 将来的に事業売却やM&Aを予定している場合 
  • グループ全体で資金を集約して投資判断を行いたい場合 
  • 事業承継を計画的に進めたい場合 

相続税や贈与税上の優遇措置が活用できるかどうかは、持株会社の具体的な設計や保有資産の内容によって異なります。そのため、事業承継目的で持株会社を設立する場合には、法人税だけでなく、相続税・贈与税の観点からも検討が必要です。

限界とリスク

持株会社にはメリットがある一方で、管理負担とコストも増加します。持株会社と事業会社は別法人であるため、それぞれについて会計帳簿、決算書、税務申告書を作成する必要があります。

そのため、会計・税務・法務に関する追加コストが発生します。構造にもよりますが、一般的には年間2,000ユーロから5,000ユーロ以上の維持コストが生じることもあります。

また、グループ内に複数の会社があっても、損益通算が自動的に認められるわけではありません。会社間で損益を通算するためには、税務上の連結制度に相当するOrganschaftの適用が必要となります。この制度を利用するには、財務的な統合、利益移転契約、少なくとも5年間の契約期間など、厳格な要件を満たす必要があります。

さらに、グループ会社間取引については、第三者間取引と同様の条件で行う必要があります。取引条件が不適切な場合には、隠れた利益配当とみなされるリスクがあります。また、租税回避防止規定である租税通則法第42条にも注意が必要です。

加えて、持株会社内に利益を留保していても、その資金を個人株主が自由に使えるわけではありません。個人で使用するためには、最終的に配当等により資金を引き出す必要があり、その時点で個人課税が発生します。

さらに、株主が国外へ転出する場合には、1%超の持分について出国税が問題となる可能性があります。EUまたはEEA域内への転出については納税猶予が認められる場合がありますが、国外移住を予定している株主がいる場合には、事前の検討が重要です。

まとめ

持株会社は、事業会社の利益や株式売却益を、比較的低い税負担でグループ内に集約し、再投資に活用できる有効な仕組みです。特に、利益をすぐに個人へ配当せず、将来の投資、買収、事業拡大、事業承継に活用したい場合には、大きなメリットが生じる可能性があります。

一方で、持株会社のメリットは、最終的な税金を完全に回避することではなく、主に課税を繰り延べ、再投資資金を効率的に確保する点にあります。したがって、後日すべての利益を個人に配当する場合には、最終的な税負担を含めて慎重にシミュレーションする必要があります。

持株会社を設立すべきかどうかは、利益水準、再投資計画、株主構成、事業売却の可能性、将来の相続・事業承継方針によって大きく異なります。導入を検討する際には、税務メリットだけでなく、管理コスト、実務負担、将来の出口戦略まで含めて、総合的に判断することが重要です。


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ドイツ税務のアップデート2026年5月

  1. 人材確保に活用できる非課税ベネフィット
  2. 接待費の損金算入と電子インボイス対応
  3. EV社用車・事業用電気自動車の税務優遇

1.人材確保に活用できる非課税ベネフィット

ドイツでは、人材確保や従業員定着の観点から、給与水準の見直しだけでなく、税務上優遇される福利厚生制度の活用が重要になっています。特に、インフレや人件費上昇が続く中で、単純な給与増額は会社側の社会保険料負担や総人件費の増加につながりやすく、従業員にとっても手取り額の増加が限定的となる場合があります。

この点、一定の要件を満たす現物給付や手当を活用することで、会社側のコストを抑えつつ、従業員の実質的な可処分所得を高めることが可能です。ドイツ子会社を有する日系企業においても、現地人材の採用・定着、駐在員やローカルマネジメント層への報酬設計、福利厚生制度の見直しにおいて、これらの制度を検討する価値があります。

月額50ユーロまでの現物給付

雇用主は、従業員に対して月額50ユーロまでの現物給付を、原則として賃金税および社会保険料の対象外として支給することができます。年間では600ユーロ相当のベネフィットとなるため、従業員にとっては実質的な手取り増加につながります。

ただし、この制度は「非課税枠」ではなく「非課税限度額」として扱われる点に注意が必要です。つまり、月額50ユーロを1セントでも超えると、超過部分だけでなく、その現物給付全額が課税・社会保険料の対象となる可能性があります。

また、現金支給は認められません。給付はあくまで実質的な現物給付である必要があり、例えば一定の要件を満たす商品券、プリペイドカード、福利厚生プラットフォームなどの利用が考えられます。現金同等物や自由に換金できるような仕組みは、税務上の優遇対象から外れるリスクがあります。

日系企業においては、日本本社の福利厚生制度をそのままドイツに適用するのではなく、ドイツ税法上「現物給付」として認められる設計になっているかを確認することが重要です。

食事手当・社員食堂・食事券

食事手当も、従業員満足度を高めるために活用しやすい制度です。雇用主は、1労働日あたり一定額まで食事手当を支給することができます。2026年時点では、1労働日あたり最大7.67ユーロの食事補助が可能とされており、そのうち現物給付価額は4.57ユーロ、雇用主による非課税補助部分は3.10ユーロとされています。

この現物給付価額については、雇用主が25%の一律課税を選択するか、従業員の自己負担として処理することが可能です。実務上は、社員食堂、食事券、デジタルミールバウチャーなどと組み合わせて活用されることが多い制度です。

日系企業では、工場や物流拠点では社員食堂、オフィス勤務者には食事券やデジタル食事補助を導入するなど、勤務形態に応じた制度設計が考えられます。ハイブリッド勤務が一般化している企業では、在宅勤務日と出社日の取扱いを明確にしておくことも重要です。

ドイツチケットなどのモビリティ補助

通勤費や公共交通機関の利用補助も、従業員にとって分かりやすいベネフィットです。ドイツチケットの月額料金は2026年以降63ユーロとされており、雇用主がこの金額を全額負担する場合、年間756ユーロ相当の通勤関連ベネフィットとなります。

公共交通機関の利用補助は、税金および社会保険料の負担を抑えながら、従業員の通勤コストを軽減できる制度です。また、環境配慮型の企業姿勢を示す手段としても有効です。

特に日系企業では、都市部のオフィス勤務者、公共交通機関で通勤する現地社員、出張頻度の高い従業員などにとって、モビリティ補助は実用性の高い福利厚生となります。一方で、社用車制度や駐車場提供と併用する場合には、給与課税上の取扱いを整理しておく必要があります。

保養手当

従業員の休暇取得やリフレッシュを支援する制度として、保養手当の活用も考えられます。保養手当は、雇用主が25%の一律課税を行うことで、従業員側では非課税として取り扱われます。

年間の上限額は、従業員本人について156ユーロ、配偶者または生活パートナーについて104ユーロ、子ども1人あたり52ユーロです。家族構成によっては、従業員本人だけでなく家族を含めた福利厚生として活用できます。

ただし、保養手当は休養・レクリエーション目的で使用される必要があり、その使用目的を文書で確認・保存しておくことが求められます。単なる追加報酬として支給した場合、税務上の優遇が否認される可能性があります。

インターネット手当

在宅勤務やハイブリッド勤務が定着する中で、インターネット手当は実務上使いやすい制度の一つです。雇用主は、従業員に対して月額最大50ユーロ、年間600ユーロまでインターネット費用を補助することができます。

この場合、雇用主が25%の一律課税を負担することで、従業員側では非課税となり、社会保険料も発生しません。業務利用か私用利用か、また勤務場所がオフィスか自宅かにかかわらず適用可能とされている点も、柔軟に活用しやすい理由です。

ただし、補助額は従業員が実際に負担しているインターネット費用を上回ってはなりません。そのため、導入時には従業員から費用に関する申告や証明を取得し、会社側で保存する運用が望まれます。

日系企業では、在宅勤務手当、通信費補助、IT機器貸与などの制度と重複しないよう、給与規程やリモートワーク規程の中で位置づけを明確にしておくことが重要です。

健康増進措置

従業員の健康管理やウェルビーイング向上を目的とした制度として、健康増進措置も税務上優遇されています。認定された職場健康増進措置については、年間600ユーロまで賃金税および社会保険料の負担なく提供することができます。

対象となるためには、社会法典第5編第20条および第20b条に基づく予防ガイドラインに沿った認定を受けていることが必要です。例えば、一定の健康プログラム、運動・予防・ストレス管理に関する認定講座などが対象となり得ます。

注意すべき点は、一般的なスポーツジム会費や任意のフィットネス費用が、常に非課税対象となるわけではないことです。制度を導入する場合には、対象プログラムが税務上の要件を満たしているかを事前に確認する必要があります。

重要な前提:通常給与への上乗せであること

これらの非課税ベネフィットを活用するうえで特に重要なのは、原則として「通常支払うべき給与に追加して」支給される必要があるという点です。

既存給与の一部を減額し、その代わりに非課税ベネフィットを支給するような給与組替えは、税務上認められない可能性があります。このような取扱いを行うと、非課税または優遇措置が否認され、賃金税や社会保険料の追徴リスクが生じます。

そのため、新たな福利厚生制度を導入する場合には、雇用契約、給与規程、ベネフィットポリシー、給与明細上の表示方法を含めて、制度設計を慎重に行う必要があります。

日系企業における活用の方向性

ドイツの日系企業では、報酬制度が日本本社主導で設計されているケースも少なくありません。しかし、ドイツでは給与課税・社会保険・福利厚生の取扱いが日本と大きく異なるため、現地税制に即したベネフィット設計が重要です。

特に、以下のような場面では、非課税ベネフィットの活用余地があります。

  • 現地社員の給与改定時 
  • 新規採用時のオファーパッケージ設計 
  • 駐在員・ローカルマネジメント層の待遇見直し 
  • 在宅勤務制度・ハイブリッド勤務制度の整備 
  • 人材定着を目的とした福利厚生制度の拡充 
  • ESGや健康経営を意識した人事施策の導入 

これらの制度は複数を並行して活用できる場合があります。適切に設計すれば、従業員にとっては実質的な手取り増加となり、会社にとっては採用競争力や従業員満足度の向上につながります。

一方で、各制度には金額上限、証憑保存、支給方法、給与への追加性、対象サービスの要件など、細かなルールがあります。制度導入後に税務調査で否認されないよう、導入前の確認と運用ルールの文書化が不可欠です。

実務上の対応ポイント

日系企業がドイツで福利厚生制度を見直す際には、単純な給与増額だけでなく、現物給付、食事手当、交通費補助、インターネット手当、健康増進措置などを組み合わせた報酬設計を検討することが有効です。制度ごとの上限額や形式要件を守り、給与規程・雇用契約・経費精算ルールに反映させることで、税務リスクを抑えながら従業員にとって魅力的な報酬パッケージを構築できます。

2.接待費の損金算入と電子インボイス対応

ドイツでは、事業上の接待費を税務上の事業経費として損金算入するためには、接待の業務関連性、金額の妥当性、参加者、接待目的、日付、場所、請求書・領収書の形式などについて、適切な証憑を備える必要があります。

2025年11月19日付の連邦財務省(BMF)通達では、事業上の目的で飲食店において接待を行った場合の証憑要件について、改めて詳細な取扱いが示されました。特に、2025年1月1日以降に導入された電子インボイス制度との関係で、接待費の証憑管理は従来以上に重要になっています。

日系企業においても、日本本社からの出張者、ドイツ子会社の営業担当者、現地マネジメントによる顧客・取引先との会食は頻繁に発生します。今後は、単にレストランのレシートを保存するだけではなく、電子インボイス、レジシステム、TSE情報、チップの記録、社内経費精算システムとの整合性まで確認する必要があります。

250ユーロを超える接待費と電子インボイス

ドイツでは、国内B2B取引において、原則として電子インボイス制度が導入されています。接待費についても、飲食店での売上が消費税法上の少額請求書限度額である250ユーロを超える場合には、電子インボイス制度との関係を確認する必要があります。

電子インボイスとは、単なるPDFや画像ファイルではなく、構造化された電子データ部分を含む請求書をいいます。ZUGFeRDやXRechnungなどの形式が代表例です。一方、PDFや画像データ、紙のレシートは、電子的に送付されていたとしても、原則として「その他の請求書」として扱われます。

もっとも、飲食店で接待が行われた時点では、まず従来型の紙の接待領収書や電子形式の「その他の請求書」が発行され、その後、必要に応じて電子インボイスにより訂正・補完されるケースも想定されています。実務上は、接待直後に受領した紙の領収書と、後日受領する構造化された電子インボイスデータを関連付けて保存する運用が重要です。

少額請求書、通常請求書、自己作成の接待記録

接待費の証憑には、金額や発行形式に応じて複数のパターンがあります。250ユーロ以下の少額請求書については、通常請求書よりも簡易な記載要件が認められる一方、250ユーロを超える場合には、より厳格な請求書要件が問題となります。

また、ドイツでは現時点で全事業者に対する登録レジ使用義務があるわけではないため、飲食店によっては機械発行の接待領収書や電子インボイスが発行されない場合もあります。さらに、国外で接待を行った場合には、ドイツ国内の形式要件をそのまま満たす領収書を取得できないこともあります。

このような場合には、飲食店からの請求書に加え、会社側で作成する自己作成の接待記録、すなわち参加者、接待目的、業務上の関係、支払内容などを記載した補足資料が重要になります。ただし、いわゆる「ビールコースター」や簡単なメモだけでは、税務上の証憑として十分とはいえません。特に仕入税額控除を行う場合には、消費税法上の請求書要件を満たす必要があります。

レジシステム、TSE情報、QRコードの確認

飲食店が電子レジシステムを使用して接待領収書を発行する場合、そのレジデータは認証済み技術的安全装置、いわゆるzTSEまたはTSEによって保護されている必要があります。

機械発行の接待領収書について税務上の損金算入を確保するためには、領収書に一定の情報が含まれているかを確認することが重要です。例えば、電子レジシステムのシリアル番号、TSEのシリアル番号、取引番号、取引開始・終了時刻、署名カウンター、検証値などが問題となります。

2024年以降は、発行義務のあるレシートには、電子レジシステムのシリアル番号とTSEのシリアル番号の双方が表示される必要があるとされています。これらの情報は、紙面上に読み取れる形で記載される場合もあれば、QRコードに格納される場合もあります。

そのため、経費精算を行う従業員や経理担当者は、領収書上のQRコードが単なる広告リンクやクーポンではなく、TSE関連情報を含むものであるかを確認できる体制を整えることが望まれます。実務上は、確認用アプリを利用してQRコードの内容を検証することも考えられます。

TSE障害時の取扱い

接待領収書に必要なTSE情報が記載されていない場合でも、直ちに必ず損金算入が否認されるわけではありません。例えば、飲食店側のTSEに一時的な障害が発生していた場合には、その旨が領収書上に明確に表示されていることが重要です。

具体的には、「TSE故障」などの表示が領収書に記載されている場合、一定の条件のもとで接待費の損金算入が認められる可能性があります。ただし、このような例外的な取扱いに依存するのではなく、会社としては、可能な限り形式要件を満たす領収書を取得する運用を徹底すべきです。

また、接待後に日を改めて請求書が発行され、当該請求書が電子レジシステムによらず作成され、かつ銀行送金やクレジットカードなどの非現金決済によって支払われる場合には、TSE情報が不要となるケースもあります。この場合には、支払方法が請求書上で確認できること、または別途支払証憑を保存しておくことが重要です。

チップの取扱い

ドイツでは、接待時にチップを支払うことが一般的です。チップも、適切に証明される限り、接待費と同様に税務上考慮され得ます。

チップの証明方法としては、請求書上にチップ額を記載し、飲食店側に確認してもらう方法や、機械発行の接待領収書上にチップ額を表示する方法があります。特にクレジットカードやキャッシュレス決済でチップを含めて支払う場合には、後日、経費精算時にチップの内訳が不明確にならないよう注意が必要です。

実務上は、手書きでチップを追記する方法よりも、レジシステム上でチップを記録し、領収書に反映させる方法の方が、証憑としての信頼性が高まります。近年では、セルフオーダー端末やWeb注文システムにおいて、注文時または支払時にチップを入力する仕組みも増えています。このような場合には、チップもレジシステム上で記録されるため、会計処理との連携がしやすくなります。

なお、飲食店の事業者自身に帰属するチップについては、主たるサービスに対応する消費税率との関係も問題となります。レストランサービスに軽減税率が適用される場合には、チップ部分の消費税処理についても正しくシステム設定されているかが重要になります。

電子インボイスを接待証憑として保存する場合

接待費に関する請求書は、紙だけでなく、電子的に発行・送付されることもあります。この場合、電子インボイス、PDF、画像ファイル、またはデジタルレシートなど、形式に応じて保存要件が異なります。

電子インボイスとして発行される場合には、構造化された電子データ部分を変更せずに保存する必要があります。接待目的や参加者など、会社側で追加すべき情報は、可視化された請求書画面やPDFに追記することも考えられますが、元の構造化データ自体は改変せず保存しなければなりません。

実務上は、紙の接待領収書、自己作成の接待記録、後日受領した電子インボイスデータを相互に関連付けて保存する運用が必要です。経費精算システムや文書管理システムを利用している場合には、これらの証憑が一体として確認できるようにしておくことが望まれます。

税務調査における確認ポイント

税務当局は、接待領収書を単に経費の裏付け資料として見るだけではありません。接待費については、まず業務上の関連性が確認されます。例えば、家族の誕生日や私的イベントに近いタイミングでの会食、子ども向けメニューが含まれる会食などは、業務関連性について追加説明を求められる可能性があります。

また、接待費の70%損金算入、30%損金不算入という処理だけを機械的に行えば足りるわけではありません。接待の目的、参加者、金額の妥当性、請求書要件、仕入税額控除の可否、支払方法、チップの記録などを総合的に確認する必要があります。

さらに、接待領収書は他の税務項目との整合性確認にも利用されます。例えば、同じ日にA市で接待をしている一方、車両運行記録上は300キロ以上離れたB市で別の予定が記録されている場合など、接待領収書が他の記録との不整合を示す資料となる可能性があります。

日系企業における実務対応

日系企業では、ドイツ法人の従業員だけでなく、日本本社からの出張者や駐在員が接待費を立替払いすることもあります。この場合、日本側の経費精算ルールでは十分であっても、ドイツ税務上の要件を満たしていない可能性があります。

そのため、ドイツ法人では以下のような対応が推奨されます。

  • 接待費精算フォームに、参加者、会社名、接待目的、業務上の関係、支払方法、チップ額を記載する欄を設ける 
  • 250ユーロ超の接待費については、電子インボイスの要否を確認する 
  • 紙の領収書と後日受領する電子インボイスを関連付けて保存する 
  • TSE情報、QRコード、レジシステム情報の確認ルールを経理担当者向けに整備する 
  • チップの記録方法を統一する 
  • 出張者や営業担当者向けに、ドイツで必要となる接待証憑の取得方法を周知する 
  • 経費精算システムがドイツの電子インボイスおよび証憑保存要件に対応しているか確認する 

特に、日本本社のグローバル経費精算システムを使用している企業では、ドイツ固有の証憑要件がシステム上反映されているかを確認する必要があります。単に画像ファイルを添付するだけでは、電子インボイスの構造化データやTSE関連情報の保存として不十分となる可能性があります。

実務上の対応ポイント

接待費については、従来のように紙の領収書を受領し、社内で70%を損金算入・30%を損金不算入として処理するだけでは、十分とはいえない時代になっています。電子インボイス、TSE情報、QRコード、チップ、自己作成の接待記録、支払証憑を一体として管理し、税務調査時に業務上の関連性と形式要件を説明できる体制を整えることが重要です。

3.EV社用車・事業用電気自動車の税務優遇

ドイツでは、電気自動車の普及を促進するため、社用車および事業用車両について税務上の優遇措置が設けられています。特に、従業員や役員が社用車を私的にも利用する場合の給与課税、また企業や個人事業主が事業用電気自動車を取得する場合の減価償却において、従来型の内燃機関車両と比べて大きな税務メリットが生じる可能性があります。

日系企業においても、駐在員や現地マネジメント向けのカンパニーカー制度、営業車両の更新、環境配慮型モビリティへの移行を検討する際には、これらの税務上の取扱いを確認することが重要です。

電気自動車の社用車に対する0.25%ルール

ドイツでは、社用車を従業員や役員が私的に利用できる場合、その私的利用部分は「金銭的価値のある利益」として所得税の課税対象となります。通常の内燃機関車両では、原則として車両の税込リスト価格の月額1%を課税対象額として算定します。

これに対し、一定の完全電気自動車については、月額0.25%のみを課税対象とする優遇措置が適用されます。対象となるのは、2025年7月1日から2030年12月31日までに取得され、税込リスト価格が10万ユーロ以下の完全電気自動車です。従来よりも対象となる価格上限が引き上げられているため、比較的高価格帯のEVについても優遇を受けられる可能性があります。

例えば、税込リスト価格が5万ユーロの車両について、私的利用に係る月額課税対象額は以下のように異なります。

  • 内燃機関車両:5万ユーロ × 1% = 月額500ユーロ 
  • 完全電気自動車:5万ユーロ × 0.25% = 月額125ユーロ 

このように、同じ価格帯の車両であっても、EVを選択することで従業員側の課税所得を大きく抑えることができます。会社側にとっても、より魅力的な社用車制度を設計しやすくなる点がメリットです。

10万ユーロ超のEV・プラグインハイブリッド車の取扱い

税込リスト価格が10万ユーロを超える完全電気自動車については、0.25%ルールではなく、0.5%ルールが適用されます。また、プラグインハイブリッド車についても、一定の要件を満たす場合には0.5%ルールの対象となります。

具体的には、プラグインハイブリッド車について、電動走行距離が80キロメートル以上であり、かつCO₂排出量が1キロメートルあたり50グラム以下であることが要件とされています。これらの要件を満たさない場合には、通常の1%ルールが適用される可能性があります。

車両選定にあたっては、購入価格やリース料だけでなく、税込リスト価格、EV・ハイブリッドの区分、電動走行距離、CO₂排出量、従業員側の給与課税への影響を総合的に比較する必要があります。

通勤利用時の追加課税もEVでは軽減

社用車を自宅と勤務先の往復にも利用できる場合には、私的利用分に加えて、通勤利用に係る課税対象額も発生します。通常の内燃機関車両では、税込リスト価格の0.03%に片道通勤距離を乗じた金額が、月額の追加的な課税対象額となります。

これに対し、0.25%ルールの対象となる完全電気自動車では、通勤利用についても月額0.0075%が適用されます。

例えば、税込リスト価格5万ユーロ、片道通勤距離20キロメートルの場合、追加的な月額課税対象額は以下のようになります。

  • 内燃機関車両:5万ユーロ × 20km × 0.03% = 月額300ユーロ 
  • 完全電気自動車:5万ユーロ × 20km × 0.0075% = 月額75ユーロ 

私的利用部分と通勤利用部分の双方で課税額が抑えられるため、従業員にとってはEV社用車の利用メリットが大きくなります。

計算基礎は実際の購入価格ではなく税込リスト価格

社用車課税において注意すべき点は、計算の基礎となるのが、実際の購入価格やリース料ではなく、初回登録時点の税込リスト価格であるという点です。メーカーオプションや工場装備の特別仕様も含まれます。

そのため、ディーラーから大幅な値引きを受けた場合や、リース契約を利用する場合でも、課税計算上は割引後の実際支払額ではなく、税込リスト価格が基準となります。

また、中古の電気自動車についても、一定の条件を満たせば優遇措置の対象となります。この場合も、再販売価格ではなく、初回登録時点の当初税込リスト価格が基準となる点に注意が必要です。

事業用電気自動車の逓減償却

電気自動車については、社用車課税だけでなく、事業用資産として取得する場合の減価償却にも注目すべき優遇措置があります。新たな投資促進措置により、一定の事業用電気自動車について、初年度に最大75%の逓減償却が認められる制度が導入されています。

この制度を利用するためには、車両が事業のために長期的に使用される目的で取得され、固定資産として分類される必要があります。また、取得時期については、2025年6月30日後から2028年1月1日前までの取得が対象とされています。さらに、当該車両がドイツ自動車税法上の電気自動車に該当することも前提となります。

この逓減償却は、特に営業車両、サービス車両、役員用車両など、事業上の利用実態が明確な車両について検討余地があります。取得年度に大きな償却費を計上できるため、投資年度の課税所得を圧縮する効果が期待できます。

事業廃止や車両売却を予定している場合の留意点

個人事業主やオーナー経営者の場合、事業廃止を予定している時期に電気自動車を取得することで、逓減償却を活用した税務プランニングが可能となる場合があります。たとえば、実際に事業で使用する目的でEVを取得し、固定資産として計上したうえで、初年度に大きな償却費を計上するケースです。

ただし、税務上認められるためには、車両が実際に事業活動に使用されていること、取得が経済的に合理的であること、単なる節税目的だけではないことを説明できる必要があります。記事中の実例でも、車両が事業廃止まで実際に営業活動に使用され、固定資産としての性質を有していることが重要な前提とされています。

事業廃止時には、車両を私有財産へ移す場合に含み益や消費税上の取扱いが問題となることがあります。そのため、取得時点だけでなく、将来の売却、私的利用、事業廃止、私有財産への移転まで含めて、事前にシミュレーションしておくことが重要です。

日系企業における実務対応

日系企業では、社用車制度が日本本社の方針やグローバルポリシーに基づいて設計されていることがあります。しかし、ドイツでは車両の私的利用に関する給与課税が明確に定められており、車種選定によって従業員側の税負担が大きく異なります。

そのため、ドイツ法人で社用車制度を運用する場合には、以下の点を確認することが望まれます。

  • 社用車ポリシーにEV・プラグインハイブリッド車の取扱いを明記する 
  • 車両ごとの税込リスト価格、CO₂排出量、電動走行距離を確認する 
  • 私的利用と通勤利用の有無を雇用契約または社用車規程で明確にする 
  • 駐在員・現地役員・営業担当者ごとの課税影響を試算する 
  • リース車両と購入車両の税務コストを比較する 
  • 充電費用、充電設備、会社負担分の取扱いを整理する 
  • 事業用車両として取得する場合には、減価償却、私的利用、消費税、売却時の処理を事前に確認する 

特に、駐在員に社用車を提供する場合、日本側では福利厚生の一部として整理されていても、ドイツ側では給与課税の対象となる可能性があります。ドイツの給与計算に適切に反映されているか、給与明細や年末の賃金税証明との整合性を確認することが重要です。

実務上の対応ポイント

EV社用車は、従業員の給与課税を抑えながら、企業の環境対応や採用競争力の向上にも資する有効な制度です。また、事業用電気自動車については、初年度に最大75%の逓減償却が認められる場合があり、投資計画や車両更新計画に大きな影響を与える可能性があります。車両導入時には、税込リスト価格、取得時期、利用実態、通勤利用、充電費用、減価償却、将来の売却・事業廃止時の処理まで含め、税務・給与・会計の観点から総合的に検討することが望まれます。


免責事項:当サイトに掲載された情報は情報提供のみを目的としたものであり、その内容について何ら法的保証をするものではありません。この情報はあくまで参考であり、適用される法律の改正や変更があった場合には変更される事になります。出来る限り正確な情報の掲載に努めて参りますが、必ずしも安全性・信頼性・正確性などを保証するものではなく、本記事の省略および誤りにより引き起こされる損害等について、当社は一切の責任を負いかねます。

ドイツ税務のアップデート2026年3月

1. 業務文書及び会計帳簿等の保存期間について

    2. GmbHの資金調達:株主からの借入金に利息を付けるべきか

    3. 給与所得税の源泉徴収:2026年1月1日以降の社会保険控除の新制度

    4. 社内イベントにおける給与税の一括課税(パウシャル課税):2026年からすべてが新しくなる?

    1. 業務文書及び会計帳簿等の保存期間について

    年末になると、どの書類やデータを破棄または削除できるかが問題になることがよくあります。その際には、いくつかの点に留意する必要があります。

    背景

    商法および税法では、事業者は、紙媒体であれ電子データであれ、事業および会計関連書類を一定期間保存しなければならないと規定しています(商法第257条、租税基本法第147条(AO)、 電子形式の帳簿、記録、書類の適切な管理および保管、ならびにデータアクセスに関する原則(GoBD))。保管期間の長さは、書類やデータの種類によって異なります。

    データごとに異なる保管期間

    最長の保存期間である 10 年は、特に、商業帳簿、在庫目録、期首貸借対照表、年次決算報告書、およびそれらの理解に必要な作業指示書やその他の組織文書に適用されます。

    最短の保存期間である 6 年は、受信および送信の商業文書やビジネス文書などに適用されます。

    ご注意:第 4 次官僚機構削減法により、会計伝票の保存期間は従来の 10 年から 8 年に短縮されました。この緩和措置は、原則として、同法の発効日(2025 年 1 月 1 日)時点で、従来の 10 年間の保存期間が満了していない場合に適用されます。

    開始日が重要

    6 年、8 年、10 年という保存期間の満了は明確に定義されています。しかし、重要なのは、保存期間がいつから開始されるかを明確にすることです。AO(ドイツ税法)第 147 条第 4 項では、次のように規定されています。「保存期間は、帳簿への最後の記入、目録、開始貸借対照表、年次決算報告書または状況報告書の作成、商取引文書または業務文書の受領または発送、会計伝票の作成、記録の作成、その他の書類の作成が行われた暦年の終了時に開始する。」

    注意:

    文書の保存期間は、年次決算書の対象年度やその年度末ではなく、年次決算書が作成された年度、または最後に記帳された年度から開始する点が重要です。例えば、2015 年に作成された 2014 年度の年次決算書の保存期間は、2025 年 12 月 31 日に終了します。

    重要な税務調査の時効が成立していない場合、文書の保存期間は延長される場合があります。これは、特に(予告のある)税務調査や、訴訟が係属している場合に適用される可能性があります。

    電子ファイルの場合、保存義務とは、関連する期限内に、データを元の形式でいつでも呼び出せるようにしておくことを意味します。紙媒体での保存だけでは不十分です。

    2. GmbHの資金調達:株主からの借入金に利息を付けるべきか

    小規模なGmbH(有限会社)は、株主から資金を借り入れるケースが多くあります。その際に借入金に利息を付けるべきか、もしくは無利息で貸し付けるべきかという問題が生じます。具体的な事例から、両方のケースの税務上の影響について示し、利息を付けることが有益かどうかについて考えてみましょう。

    前提条件

    A は、GmbH の唯一の株主であり、代表社員です。GmbH は年間 100,000 ユーロの利益を上げ、事業税率が 440% の自治体に所在しています。A 自身は独身で、無宗教です。彼の収入には、42% の均一税率と 5.5% の連帯税が課されます。

    Aの有限会社が事業投資のための資金を必要としているため、A は GmbHに100,000 ユーロの融資を行いたいと考えています。そこでAは次の疑問を抱いています。GmbHに無利子で融資を行い、削減できた利息額を後に自身に分配すべきか、それとも、市場金利である年率 3% の金利でGmbHに貸し付ける契約を締結した方が良いかを検討しています。なお、A は、他の資本収益のために、貯蓄者控除額をすでに使い果たしています。

    シナリオ 1:無利息での貸し付け

    「無利息での貸し付け」のシナリオでは、税務上の影響は次のとおりです。

    1. GmbH レベルでの税負担

    無利息での貸し付けの場合、GmbH は100,000ユーロの利益を計上することになります。なお、無利息の場合でも借入金がGmbH の税務上の貸借対照表において年率 5.5% で割引計算されるわけではないということです。無利息の負債を強制的に割引計算して貸借対照表に計上する制度は 2023 年に廃止されています。

    100,000 ユーロの利益は、15% の法人税(KStG 第 23 条第 1 項)と 5.5% の連帯追加税(SolzG 第 4 条)の対象となるため、税負担は 15.825% (15,825 ユーロ)となります。さらに、この利益は営業税の対象にもなります。営業税の税率は440%で、15.40% (3.5 x 440/100) となるため、15,400ユーロの営業税が課税されます。これらの税金を差し引いた後、GmbHの手元には68,775 ユーロが残ります。

    2. 株主レベルでの税負担

    A は、GmbH の純利益 68,775 ユーロを直接利用することはできません。なぜなら、その利益はまず A に分配されなければならないからです。GmbH が 68,775 ユーロを分配すると、A には資本資産からの収入が発生します(所得税法(EStG)第 20 条第 1 項第 1 号)。課税の基準となるのは、25% の定額源泉徴収税率(所得税法(EStG)第 43 条第 1 項第 1 号および第 43a 条第 1 項第 1 号)です。この 25% に 5.5% の連帯税が加算されるため、実際の税負担は 26.375% となります。

    しかし、A はこの税金を直接支払う必要はありません。なぜなら、GmbH は、所得税法(EStG)第 44 条第 1 項に基づき、配当金から税金を差し引き、税務署に納付する義務があるからです。したがって、GmbH が 68,775 ユーロの純利益を A に分配した場合、源泉徴収後にA の口座への入金される金額は50,635.60 ユーロ(68,775 ユーロ – 26.375%)となります。

    重要:

    18,139.40 ユーロの源泉徴収税により、税務署の課税権は清算されます(所得税法(EStG)第 43 条第 5 項)。したがって、Aはこの収入を個人の所得税の申告書で申告する必要はありません。

    Aは、GmbHの25%以上の株式を保有しているため、所得税法(EStG)第32d条第2項第3号に基づく申請により、25%の定額源泉徴収税と追加の連帯税を免除される可能性があります。そのメリットは、利益分配の40%(27,510ユーロ) が非課税となることです(所得税法§3Nr.40Buchst.d i. V.m.S.2)。ただし、残りの 60% (41,265 ユーロ) は、通常の所得税率42%に5.5%の追加税が課せられます。これにより生じる税負担(連帯税を含む)は18,284.52ユーロとなり、定額税負担 18,139.40 ユーロを上回るため、この申請は不利となります。

    3. 無利息での貸し付けによる結果

    このように無利息での貸し付けの場合は、税負担の総額は49,364.40 ユーロとなります。Aは、税引き後50,635.60ユーロを利用できることになります。

    シナリオ 2:年率3%の金利で貸し付ける場合

    「ローンに金利が適用されるシナリオ」では、以下の税務上の結果が生じます。

    1. GmbH レベルでの税負担

    利息の支払いが合意されている場合、その利息は、市場水準の利率である限り、GmbH レベルでは事業費となります。一方、市場水準の利率を上回る利息は、隠れた利益分配とみなされ、GmbH の税務上の損金とはなりません(KStG 第 8 条第 3 項第 2 文)。この例では、3% の金利は妥当な水準だと考えられるため、融資額は 100,000 ユーロに対する年間利息3,000ユーロは損金となります。

    これにより、GmbH の所得は 97,000 ユーロに減少します。法人税(15%)と追加税(法人税の 5.5%)は 15,350.25 ユーロになります。さらに、15.40% の事業税(14,938 ユーロ)も課せられるため、すべての税金を差し引いた後、GmbH に残る資金は66,711.75 ユーロとなります。

    2. 株主レベルでの税負担

    66,711.75 ユーロがAに分配される場合、GmbH はその25%の源泉徴収税(16,677.93ユーロ)と 5.5%の追加税(917.28 ユーロ)を源泉徴収しなければなりません。したがって、Aの口座には 49,116.54ユーロが入金されます。利息のない最初の例と比較すると、1,519.06 ユーロ少なくなります。

    さらに、会社が支払った利息も加わります。これは、A にとって資本資産からの収入となります(所得税法(EStG)第 20 条第 1 項第 7 号)。GmbHは(銀行などではないため)税金の源泉徴収義務を負わないため、Aはこの利息を個人の所得税申告書で申告しなければなりません(所得税法(EStG)第 32d 条第 3 項)。税額決定の枠組みでは、原則として、25% の定額源泉徴収税と追加の連帯税(所得税法(EStG)第 32d 条第 1 項)が課税されます。しかし、A は GmbH の株式を10%以上保有しているため、所得税法(EStG)第 32d 条第 2 項第 1 号 b の特別規定が適用されます。結果:この利息は、有利な源泉徴収税の対象ではなく、限界税率による所得税の対象となります。Aの場合、42%に5.5%の追加税が加算されるため、税負担は1,329.30ユーロとなります。税金を差し引いた後、Aが受け取る利息は1,670.70ユーロとなります。

    3. 3. 3% のローン金利の場合の結果

    3%の金利で合意した場合、Aは合計50,787.24ユーロ(49,116.54 + 1,670.70ユーロ)を純額で受け取ります。これは、金利がない場合と比較して151.64ユーロのメリットとなります。

    3. 給与所得税の源泉徴収:2026年1月1日以降の社会保険控除(Vorsorgepauschale)の新制度

    2026年1月1日以降、毎月の給与所得税の源泉徴収額の計算で考慮される「社会保険控除(Vorsorgepauschale)」に関する税制ルールが大きく変更されました。ここでは、何が新しくなったのか、また2026年の社会保険控除がどのように算出されるのかについて、重要なポイントをまとめます。

    社会保険控除(Vorsorgepauschale)の基本

    毎月の給与から源泉徴収される税額を計算する際には、社会保険控除が考慮されます。これは、健康保険・介護保険・年金保険(さらに2026年以降は、場合によって失業保険の一部も含む)への保険料が、所得税申告時の特別控除として後から税務上反映されるのではなく、年間を通じて源泉徴収の段階ですでに税務上考慮されるようにするためです(所得税法 §39 第2項第5文第3号)。

    2026年1月1日からの新制度:主な変更点

    2025年8月14日付の連邦財務省(BMF)の通達(IV C 5 – S 2367/00012/004/033)により、社会保険控除の算定方法が改定されました。給与所得税の観点では、以下が適用されます:

    • 2026年1月1日以降、「最低社会保険控除」は廃止されました。
      (2025年末までは給与の12%、最大1,900ユーロまたは3,000ユーロ)。
    • 2026年以降、社会保険控除には、月額給与に基づいて計算された法定保険料のみが含まれます。
    • 新たに、失業保険料の一部も社会保険控除に含まれるようになりました(詳細は後述)。
    • 民間の健康保険および介護保険については、保険会社が連邦中央税務局(BZSt)へ電子的に報告し、ELStAM経由で取得可能な保険料のみが社会保険控除の対象となります。

    ※注意:2026年1月1日からの新制度には複数の目的があります。


    一つは、社会保険控除をより正確で公平なものにすること。もう一つは、保険料支払いの電子的報告を義務化することで、税務行政のデジタル化を推進することです。

    失業保険料の一部の算入

    前述のとおり、2026年1月1日以降は、労働者が実際に支払った場合、失業保険料の一部も社会保険控除に含まれるようになりました。

    ただし、税クラスI~Vでは、健康保険および介護保険料が年間1,900ユーロ未満の場合にのみ考慮されます。年間1,900ユーロに達するまでは、失業保険料も社会保険控除に算入されます。

    結論

    実際の保険料支払いに基づいて社会保険控除を再計算することにより、2026年1月1日以降、納税者にはさまざまな影響が生じる可能性があります。

    • これまで(自分にとって過大だった)最低社会保険控除の恩恵を受けていた低所得者は、2026年以降、手取り給与が減少する可能性があります。
    • 一方、保険料が高額な高所得者の場合、従来の最低社会保険控除が実際の支払いに比べて低かった場合には、2026年に手取り給与が増える可能性があります。

    4. 社内イベントにおける給与税の一括課税(パウシャル課税):2026年からすべてが新しくなる?

    BFH(ドイツ連邦財政裁判所)が認めた取り扱いは、立法者によって再び制限されることになりました。2024年、BFHは、管理職など特定の参加者のみを対象とした社内イベントでも給与税の一括課税が可能であると判断しました。しかし、この納税者に有利な判例は、2026年からの法改正によって再び制限されることになりました。

    社内イベントへの参加は給与所得になる

    企業レベルで行われる社交的性格を持つイベント(例:社員旅行、記念式典、夏祭り、クリスマスパーティーなど)は「社内イベント(Betriebsveranstaltung)」に該当します。

    このようなイベントに参加した場合、その参加による利益は原則として所得課税および社会保険料の対象となる給与所得に含まれます(所得税法 §19 第1項1a号)。

    ただし例外として、イベントへの参加が職務遂行の一環である場合(例:人事責任者や労働者代表として複数部署のイベントに出席する場合)は、給与所得とはみなされません。

    救済措置:従業員1人あたり110ユーロの非課税枠

    社内イベントによる利益が必ずしも課税対象になるわけではありません。所得税法 §19 第1項1a号第3文では、1回のイベントにつき110ユーロまでの利益は所得とみなされないとされています。

    この110ユーロは「非課税枠(Freibetrag)」であり、「限度額(Freigrenze)」ではありません。非課税枠の適用には以下の条件があります:

    • 社内イベントへの参加が全従業員に開かれていること。
      つまり、雇用主は全従業員を招待する必要があります。特定の一部のみ招待した場合、原則として非課税枠は適用されません。
    • ただし、参加者の制限が特定グループの優遇とみなされない場合は例外があります。
      例:特定部署のみ、退職者全員、一定の勤続年数を達成した従業員など。
    • 非課税枠は年間最大2回までの社内イベントに適用されます。
      3回以上参加した場合、どの2回に適用するかを選択できます。

    一括課税(パウシャル課税)による従業員負担の回避

    社内イベントによる利益が110ユーロを超える場合、または年間3回以上イベントに参加した場合、超過分または追加イベントは課税対象となります。通常は個人の税率に基づき、税金だけでなく社会保険料も発生します。

    しかし、雇用主が所得税法 §40 第2項第1文第2号に基づき25%の一括課税を適用すれば、従業員の負担を回避できます。この場合:

    • 源泉徴収の手続きが簡素化される
    • 雇用主・従業員双方の社会保険料が不要になる

    限定的(エクスクルーシブ)イベントにも一括課税は可能?

    従来、税務当局は「社内イベント」とは、企業または部署の全員に参加機会があるイベントを意味すると解釈していました。そのため、個別に選ばれた参加者だけのイベントは社内イベントとみなされず、

    • 110ユーロの非課税枠
    • 有利な一括課税

    いずれも適用されませんでした。

    しかし2024年、BFHはこの解釈を変更しました(判決:2024年3月27日、VI R 5/22)。法律上の定義が参加者範囲に依存しないため:

    • 非課税枠(110ユーロ)は参加対象が全従業員であることが条件
    • 一括課税はイベントが社内イベントであれば参加者範囲は問わない

    と判断しました。

    実務上のポイント:
    この判例により、2015年以降は、取締役や管理職のみが参加する限定的なクリスマスパーティーでも、一括課税は適用可能(ただし非課税枠は不可)となりました。

    立法者が限定イベントの優遇を撤廃

    BFH判決により、特定参加者のみのイベントにも税務上の優遇が認められるようになったことは、立法者にとって問題視されました(憲法第3条の平等原則との関係も考慮)。

    そのため、2025年税制改正により、2026年から以下のように変更されました:

    雇用主が25%の一括課税を適用できるのは、「社内イベントへの参加が企業または部署の全従業員に開かれている場合」に限定されます。

    まとめと実務上のアドバイス

    今回の法改正により、社内イベントにおける一括課税は2015年以前と同様、全従業員に開かれたイベントのみが対象となり、従業員間の公平性が強化されました。

    ただし重要な点として:

    • BFH判例は完全に無効になったわけではありません。
    • 新ルールは2026年1月1日から適用されます。
    • したがって2015年~2025年の課税期間については、限定イベントでも一括課税を適用可能です。

    特に過去年度の税務調査や、2025年12月に管理職限定で実施されたクリスマスパーティーなどでは、この扱いを利用できます。

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    ドイツ税務のアップデート2025年12月

    1. 税務申告:2026年が目前 ― 2021年分の所得税の還付申告は今すぐ提出を
    2. 電子請求書(Eインボイス)対応に関する新たなBMF通達案の概要
    3. 中小企業向けの特別償却制度
    4. 法人税・事業税における最低税負担制度は合憲
    5. GmbH持分売却後も取締役として勤務する場合の課税関係


    1. 税務申告:2026年が目前 ― 2021年分の任意申告は今すぐ提出を

    つい最近2025年が始まったばかりのように感じますが、気がつけば年末が目前に迫っています。

    2021年分について申告義務がなく、かつ任意の税務申告も行っていない方は、早急に対応する必要があります。というのも、2021年分の税金還付は、2025年12月31日までに税務署へ申告書を提出しなければ失われてしまうからです。

    この期限を過ぎてから、所得税法(EStG)第32d条第6項に基づく有利判定(Günstigerprüfung)を申請しても、残念ながら還付を受けることはできません。この点については、最近、連邦財政裁判所(BFH)も納税者側の主張を退けています。

    任意申告における確定期限(時効)

    税務署が税額を確定できるのは、**確定期限(Festsetzungsfrist)**がまだ経過していない場合に限られます。確定期限が過ぎると、税金を徴収する権利そのものが消滅するためです(租税通則法[AO]第47条)。

    そのため、確定期限後に発行された課税通知は**違法(ただし無効ではありません)**となり、期限内に異議申立てを行えば争うことが可能です。

    AO第169条第2項第2号により、確定期限は4年間と定められています。また、AO第170条第1項により、原則として税金が発生した年の年末から起算されます。

    このため、2021年分の所得税は2025年12月31日をもって時効となります。

    なお、課税通知書(またはAO第122a条に基づく電子通知)が、期限内に税務署から発送されていれば足りる点に注意が必要です(AO第169条第1項第1号)。

    重要

    12月31日が土日である場合、期限は自動的に次の平日に繰り延べられます(AO第108条第3項)。1月1日は祝日であるため、実際の期限は翌年1月2日となります。

    例1

    12月31日の終了と同時に時効が成立します。税務署は12月30日に課税通知を郵送し、納税者マリーは翌年になってそれを受け取りました。

    結論
    この場合、マリーに対する課税通知は有効です。実際に通知が届いた日が12月31日以降であっても問題にはなりません。

    仮に通知が到達しなかった場合には、有効な行政処分は成立しませんが、その場合でも、税務署は翌年に新たな課税通知を出すことはできません。すでに時効が成立しているからです。

    このような事情から、税務署は時効成立直前には、配達証明付き郵便(PZU)で通知を送付することが多くなっています。

    期限直前に提出した税務申告の扱い

    任意申告によって税金の還付を見込んでいる場合、確定期限を常に意識しておく必要があります。
    2021年分の申告をまだ行っていない場合、還付請求権は2025年12月31日で時効となるため、早めの対応が不可欠です。

    では、2025年12月31日当日に申告書を提出した場合はどうなるでしょうか。税務署が同日に課税通知を出すことは現実的に不可能です。この場合、時効が成立してしまうのでしょうか。

    答えは「No」です。

    AO第171条第3項など、確定期限の進行を停止させる規定が存在します。同条では次のように定められています。

    「確定期限の満了前に課税申請がなされた場合、その申請については、異議を申し立てることができない状態で決定が下されるまで、確定期限は経過しない。」

    つまり、2021年分の申告書を期限内に任意で提出した場合、それは課税申請とみなされ、税務署が課税通知を発行し、その通知が確定するまで時効は成立しません。

    通常、異議申立期間が終了した時点で通知は確定します(異議申立てを行わなかった場合)。

    例2

    マリーは2025年12月20日に、2021年分の所得税申告書を任意で提出しました。見込まれる還付額は500ユーロです。

    結論
    期限内に申告しているため、AO第171条第3項による時効停止が適用されます。

    その結果、税務署は2026年以降であっても課税通知を発行しなければならず、時効を理由に拒否することはできません。

    一方、2026年1月1日以降に提出していた場合には、2021年分はすでに時効となってしまいます。

    救済策となる「申告義務」の存在

    任意申告ではなく、申告義務がある場合には、確定期限の計算方法が大きく異なります。申告義務が生じるのは、たとえば次のような場合です。

    • 利益所得、または源泉徴収されていないその他の所得が410ユーロを超える場合(例:賃貸収入)
    • 配偶者の税区分がIII/VまたはV/IIIである場合
    • 進行税率対象所得(Progressionseinkünfte)が410ユーロを超える場合
      (AO第149条第1項、EStG第25条第3・4項、第48条)

    重要
    申告義務がある場合、AO第170条第2項第1号により、確定期限は課税年度の年末ではなく、申告書を提出した年の年末から起算されます。

    さらに、申告書を提出しなかった場合には、原則として確定期限は開始しません。その結果、税務署は何年経っても初回の課税通知を発行できてしまいます。

    この不都合を防ぐため、同条では、遅くとも税金発生年の3年後の年末からは確定期限が開始すると定めています。

    例3

    マリーは2021年に25,000ユーロの事業所得があり、申告義務がありました。申告書は2023年に提出しました。

    結論
    所得税は2021年12月31日に発生していますが、申告義務があったため、確定期限は2023年12月31日から開始します。

    その結果、時効は2027年12月31日に成立します。

    別のケース

    マリーは、2021年分の申告書を現在まで提出していません。

    結論
    確定期限は、税金発生年の3年後である2024年12月31日から開始します。

    そのため、時効は2028年12月31日に成立します。

    任意申告と有利判定申請(§32d EStG)は救済となるか

    追加所得の少ない会社員は、多くの場合、申告義務がありません。そのため、2021年分については2025年12月31日で時効となります。

    もっとも、多くの会社員は利息や配当などの資本所得を得ています。これらは通常、25%の源泉分離課税(Abgeltungsteuer)が適用され、源泉徴収により課税関係は完結します。

    しかし、§32d第6項EStGに基づく有利判定申請を行うことで、総合課税の方が有利となり、税負担が軽減される場合があります。

    また、§32d第4項EStGに基づく源泉徴収額の見直し申請も、貯蓄者控除が十分に考慮されていない場合や、外国税額控除が可能な場合には有効です。

    ここで問題となるのは、有利判定申請だけで申告義務が発生し、確定期限の起算点が延長されるのかという点です。もしそうであれば、2021年分の確定期限は2028年12月31日となり、2025年以降でも申告が可能になります。

    この点について、BFHは最近、税務当局の立場を支持する判断を下しました。

    すなわち、確定期限経過後に申告書とともに提出された有利判定申請には、確定期限の開始を遅らせる効果はないと判断しています
    (BFH判決:2025年5月14日、VI R 17/23)。

    ただし、前向きな点もあります。

    源泉徴収されていない課税所得の合計が410ユーロを超える場合には、AO第170条第2項第1号が適用されることをBFHは明確にしました。

    これには、たとえば私的貸付による利息など、資本所得税が課されていない資本所得も含まれます。

    例4

    2021年分は原則として2025年12月31日に時効となります。

    マリーは2026年になってから申告書を提出し、給与所得に加えて、私的貸付による利息500ユーロを申告しました。

    結論
    利息収入が410ユーロを超えているため、申告義務が生じます。

    確定期限は2025年ではなく、2028年12月31日まで延長されます。

    そのため、2026年に提出された申告書も有効であり、課税通知および還付を受けることができます。

    まとめ

    2021年分について申告義務がなく、かつまだ任意申告を行っていない場合は、還付の可能性があるかどうかを必ず確認すべきです。特に次のような場合には、還付が生じることが多くあります。

    • 必要経費(広告費)が1,230ユーロを超えている場合
    • 職人サービスや家事関連サービスの税額控除を申請できる場合(§35a EStG)
    • 2021年中に転職した、または初めて就職した場合
    • 資本所得に対して銀行が源泉徴収した税金が、有利判定(§32d第6項EStG)により軽減できる場合

    還付が見込まれるのであれば、2021年分の申告は一刻も早く提出してください。

    そうしなければ、年末をもって還付請求権は時効により失われてしまいます。


    2. 電子請求書(Eインボイス)対応に関する新たなBMF通達案の概要

    電子請求書(Eインボイス)対応に関する新たなBMF通達案の概要

    2025年1月1日から、経過措置を伴いながら、ドイツ国内の企業間取引(B2B)では電子請求書(Eインボイス)の使用が原則義務化されました。これに関する最初のBMF通達は2024年10月15日に公表されており、今回、その続編となる第2のBMF通達案が2025年6月25日に公表されました。

    通達案のポイント

    この通達案は、主に既存の付加価値税適用通達(UStAE)を、2024年10月のBMF通達内容に整合させることを目的としています。あわせて、実務上の細かな論点の整理や対応上の注意点も示されています。

    ただし、本案は変更点のみを列挙した内容であるため、単独では理解が難しく、両BMF通達とUStAEを突き合わせて読む必要があります。

    適用範囲と主な例外

    電子請求書の義務は、通常の請求書だけでなく、自己請求方式(クレジットノート)や、リバースチャージ取引、農林業の平均税率課税、旅行業、差額課税取引などにも及びます。

    請求書の受領者が小規模事業者や非課税事業者であっても、原則として義務は免れません。

    一方で、250ユーロ以下の少額請求書、小規模事業者の請求書、旅客輸送の乗車券については、従来どおり電子請求書以外の形式も認められています。

    実務上の重要ポイント

    • 役務内容の記載
      電子請求書の構造化データ部分だけで、提供内容が明確に確認できる必要があります。補足資料をPDFなどで添付することは可能ですが、リンクのみの記載は不可とされています。
    • 請求書の訂正
      電子請求書の訂正は、原則として同じく電子請求書の形式で行う必要があります。
    • 保存義務
      電子請求書は8年間保存が必要で、特に構造化データ部分は改変されない形で保存しなければなりません。ただし、GoBD対応システム外での保存であっても、直ちに違反とはされません。
    • バリデーション(検証)の重視
      必須記載事項が構造化データに正しく含まれていない場合、電子請求書ではあっても「適正な請求書」とは認められない点が強調されています。

    今後の予定と評価

    本通達案は、2025年夏にかけて業界団体から意見募集が行われ、最終版は2025年第4四半期に公表予定です。また、2025年7月にはGoBDも電子請求書対応に改正されています。

    EU全体では、付加価値税制度のデジタル化は本来2030年代に本格化する予定でしたが、ドイツはこれを前倒しで導入しました。その結果、制度開始後も解釈が定まらない状況が続いている点については、実務上の混乱を招いているとの批判もあります。


    3. 中小企業向けの特別償却制度

    ― 税務上のメリットを上手に活用する ―

    特別償却制度は、中小企業の投資を後押しするための税制優遇措置です。通常の償却に加えて追加償却を行うことで、課税所得が減少し、結果として税負担の繰延べ効果が得られます。以下では、§7g第5項EStGに基づく特別償却の主な要件と活用方法を整理します。

    特別償却の対象と要件

    通常、減価償却の対象となる**有形の減価償却資産(固定資産)**は、耐用年数に応じて定額法または定率法で償却します。これとは別に、一定の要件を満たす場合には、追加で特別償却を行うことが可能です。

    主な要件は以下のとおりです。

    • 資産を取得または製造した年の前年度の利益が20万ユーロ以下であること
    • 当該資産が、取得・製造年度およびその翌年度において、
      国内の事業所で専ら又はほぼ専ら事業用として使用されること
      (または賃貸されること)

    償却額と柔軟な配分

    特別償却額は、取得原価または製造原価の最大40%まで認められます。
    大きな特徴は、この40%を取得・製造年度からその後4年間の計5年間に、自由に配分できる点です。

    • 毎年必ず償却する必要はありません
    • 40%の上限をすべて使い切る必要もありません

    実務上のポイント

    利益が多い年度に重点的に特別償却を行うことで、税負担の繰延べ効果を最大化できます。年度ごとの利益状況を踏まえた計画的な活用が重要です。

    注意点

    資産全体としては、償却できる総額は一度限りです。そのため、特別償却を行うと、将来の通常償却額はその分減少します。

    • 定率法の場合
      特別償却により帳簿価額が下がるため、翌年以降の償却額は自動的に減少します。
    • 定額法の場合
      優遇期間(5年)が終了した6年目以降に、残存簿価を残存耐用年数で再計算する必要があります(§7a第9項EStG)。

    4. 法人税・事業税における最低税負担制度は合憲

    ― 破産により損失が使えなくなる場合でも ―

    連邦憲法裁判所は、法人税および事業税における最低税負担制度(最低利益課税)について、憲法に適合するとの判断を示しました。これは、破産手続や法人の清算により繰越欠損金を将来利用できなくなる場合であっても同様です。

    制度の背景

    法人税では、繰越欠損金の利用に期間制限はありませんが、金額には上限があります。

    • 各課税年度において、総所得1,000,000ユーロまでは全額控除可能
    • これを超える部分については、超過額の60%までしか控除できません
      (※2024~2027年の課税年度に限り、70%に引き上げ)

    この制度は、法人税法§8第1項と所得税法§10d第2項に基づくものです。

    事業税についても同様の最低課税制度があり、こちらは70%への一時的引上げはありません。

    この結果、多額の繰越欠損金があっても、一定額の所得は課税対象として残る仕組みとなっています。

    争点と審査の経緯

    連邦財政裁判所(BFH)は、破産や清算により欠損金の相殺機会が完全に失われる場合にも、この最低課税が認められるのかに疑問を呈し、問題を連邦憲法裁判所に付託しました。

    本件では、破産手続を経て解散したGmbHにおいて、繰越欠損金を最終的に使い切れなかったケースが対象となりました。これはいわゆる「欠損金の確定的消滅(デフィニティブ効果)」と呼ばれます。

    連邦憲法裁判所の判断

    裁判所は、所得課税は原則として納税者の担税力に応じて行われるべきであるとしつつも、
    繰越欠損金が失われた結果、実質的に担税力に反する「実体課税」に近い状況が生じ得ること自体は認めました。

    しかしながら、このような結果であっても、

    • 国家の正当な財政目的
    • 立法者に認められた一定の類型化・簡素化の裁量

    を踏まえれば、制度は恣意的とはいえず、合憲であると判断しました。

    まとめ

    今回の決定により、最低利益課税は、破産や清算により損失が確定的に失われる場合でも有効であることが明確になりました。

    したがって、欠損金が使えなくなること自体を理由に、最低課税制度を憲法違反として争うことは困難といえます。


    5. GmbH持分売却後も取締役として勤務する場合の課税関係

    ― 売却益か給与所得か、BFHの判断が注目される ―

    ドイツでは、GmbHの(共同)オーナーが会社の持分を売却した後も、一定期間、契約に基づいて取締役(Geschäftsführer)として会社に残るケースが広く見られます。このような取引では、売却代金の一部が将来の取締役業務の継続に条件付けられることがありますが、その場合、当該金額を税務上どのように扱うべきかが重要な論点となります。

    具体的には、

    • **持分売却による譲渡益(§17 EStG)**として課税されるのか
    • それとも**取締役としての労務提供に対する給与所得(§19 EStG)**として課税されるのか

    という点が問題となります。前者であれば税負担が相対的に軽くなる一方、後者に該当すると個人の高い限界税率が適用されるため、実務への影響は小さくありません。

    この点について、現在、連邦財政裁判所(BFH)で審理が進められており、その判断が注目されています。これに先立ち、第一審にあたるケルン財務裁判所(FG Köln)は、給与所得に該当すると判断しました。

    事案の概要

    問題となった事案では、GmbHのオーナーが共同出資者とともに、自身の50%持分を第三者に売却しました。売却代金は、次の2つの要素から構成されていました。

    • 持分譲渡と引き換えに確定的に支払われる固定額
    • 両売主が少なくとも5年間、取締役として勤務することを条件に支払われる条件付金額

    この条件付金額については、取締役を期間満了前に退任した場合、すでに受領した金額を返還する義務が明確に定められていました。

    税務当局と納税者の見解

    税務当局は、この条件付金額について、持分の売却そのものに対する対価ではなく、取締役として会社にとどまり業務を行うことへの報酬であると評価しました。そのため、この金額は給与所得として課税されるべきであり、結果として高い限界税率が適用されると判断しました。

    これに対し、売主である元オーナーは、当該金額も持分売却と一体の対価であり、所得税法第17条(§17 EStG)に基づく持分譲渡益として扱うべきだと主張しました。

    ケルン財務裁判所の判断

    FG Kölnは、税務当局の見解を支持しました。裁判所は、問題となった金額が、

    • 法的にも実質的にも取締役業務の継続と密接に結び付けられていたこと
    • 取締役を途中で辞任した場合には、返還義務が課されていたこと

    を重視しています。これらの事情から、当該金額の対価は持分譲渡ではなく、取締役としての労務提供にあると評価するのが相当であり、給与所得として課税すべきであると判断しました(FG Köln、2024年12月4日判決、12 K 1271/23)。

    BFHでの審理と実務上の対応

    本判決に対し、売主は不服としてBFHに上告しており、事件番号はIX R 1/25です。今後、BFHが「持分売却の対価」と「役務提供に対する報酬」との線引きについて、どのような基準を示すのかが注目されます。

    本件と類似した取引についてすでに課税を受けている場合には、

    • 税務処分に対して異議申立てを行い
    • 本BFH係属事件を根拠として
    • 税務通則法§363第2項第2文AOに基づき、**手続の停止(Ruhen des Verfahrens)**を求めるといった対応を検討する余地があります。

    BFHの判断が出るまでの間、慎重な対応が求められるテーマといえるでしょう。


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    HLSグローバル、シンガポールへ進出のお知らせ

    2025年10月1日

    HLSグローバル、シンガポールへ進出のお知らせ

    日本、東京/シンガポール

    国際会計、税務、ビジネスアドバイザリーのリーディングカンパニーである HLS Global Co., Ltd.(以下、HLS グローバル) は、シンガポールに子会社 HLS GLOBAL SEA PTE. LTD.(以下、HLS SG) を設立し、グローバル進出による規模拡大を発表いたします。HLS SG の設立は、同地域の日系および多国籍企業に卓越したサービスを提供するという当事務所のコミットメントにおける重要なマイルストーンとなります。

    新たに設立される事務所は、会計、監査、税務、デューデリジェンス、M&A後の統合支援、ESGアドバイザリー、CFOサービス、財務デジタルトランスフォーメーションなど、幅広いサービスにおける専門知識の提供に重点を置きます。この戦略的拡大は、シンガポールにおける既存および新規の日系(および多国籍)企業を支援し、東南アジアを拠点とする企業のグローバルな事業展開を促進します。

    (さらに…)

    ドイツ税務のアップデート2025年9月

    1. 貸借対照表に計上された未払貸付金利息の支配株主への帰属時期
    2. 現金管理に不備がある場合の推計課税に関する税務当局の権限
    3. E-車両に関する総額リスト価格と減価償却の税制改正
    4. 自営業と雇用の間の曖昧な境界線

    1. 貸借対照表に計上された未払貸付金利息の支配株主への帰属時期

    単独または支配的な立場にある株主は、自身の会社に対する債権が支払期日に到達した時点で、たとえ実際に支払われていなくても、その債権を受け取ったものとみなされます。これは、支配株主であれば通常、自分に対する支払いのタイミングを自ら決定できる立場にあるためです。

    事案の概要


    本事案では、有限会社(GmbH)の支配株主が、会社の経済的困難により実際には支払いを受けていないにもかかわらず、会社に対する支払期日到来済の債権を「受領した」とみなすことができるかどうかが争点となりました。

    判決の内容

    財務裁判所(FG)は、支配株主は、会社に対する債権が支払期日を迎えた時点で既に受領したものとみなされると判断しました。この「みなし受領」の原則は、少なくとも債権が明確で、争いがなく、支払期日を迎えており、かつ支払能力のある会社に対するものである場合には適用されます。

    この場合の「会社の支払不能」とは、資金不足に基づく恒常的な金銭債務の履行不能状態のみを指します。通常、会社が「崩壊」する前、すなわち破産手続開始の申立てがされていない限りは、支払不能とは認められません。

    たとえ会社が経済的困難に直面していたとしても、支配株主が劣後条項付きの金銭貸付けを行い、合意された利息が会社の会計上は負債として計上されている一方で、数年間支払われていない場合でも、その利息は株主に受領されたものとみなされます。

    これは、会社が他の債権者に対しての支払い義務を履行しており、破産申立てもされていないような状況であれば適用されます。

    また、利息の支払期日は、劣後条項の存在によって変更されるものではありません。劣後条項に、支払期日を遅らせる「支払猶予の合意」が含まれていない限り、利息は当初の契約どおりの期日に支払期日を迎えます。

    劣後条項の効力は、破産法上の支払期日(ドイツ破産法 §17(2) 1項)にのみ影響を与えるものであり、民法上の支払期日(BGB §271)とは異なります。

    民法上の「支払期日」とは、債権者が支払いを請求できるようになり、債務者が遅れていれば遅延損害金が発生したり、時効が進み始めるタイミングを指します。

    一方、破産法上の「支払期日」とは、個別の債権回収から、破産手続などの全体的な債権回収に移行する判断の基準となる時点を意味します。

    劣後条項(他の債権者への支払いが優先されるという合意)は、会社が本当に破産状態にある場合に初めて効力を発揮します。それまでは、支払期日そのものや請求権の発生には影響を与えません。

    1. 現金管理に不備がある場合の推計課税に関する税務当局の権限

    本事案は現金取引の多いスナックバーを経営している納税者に対して税務調査が行われ、納税者の現金管理に不備があると指摘された事案です。

    シュレスヴィヒ=ホルシュタイン州の財務裁判所(2023年8月28日付、3 K 25/22号。上訴中:連邦財務裁判所BFH X R 27/24)の判断は下記のとおりです。

    電子レジの操作が不正に行える可能性があることを考えると、そのレジに関する組織的な資料やプログラム仕様書などが整備されていない場合、それだけで重大な不備と見做されます。このような不備があると、税務当局は納税額を推計で決定することが認められるというのが裁判所の判断です。

    また、税務署が定率(標準的な割合)を用いて課税額を算定したことについても、裁判所は妥当だと判断しました。連邦財務裁判所がこの方法に疑問や懸念を示していたとしても、公式な定率表を用いて同業他社と比較する推計手法は、依然として広く認められていると述べられました。

    推計に対する異議申し立ては、税務調査の防御における“日常業務”

    実務的なアドバイス:

    今回の判決は、税務調査に対する納税者へのアドバイスにおいて非常に重要です。税務調査では、税務署による推計の権限や、その根拠となる手法について対処することが、税理士の基本業務の一つとなっています。

    上訴審(事件番号X R 19/21)では、連邦財務裁判所(BFH)は、公式な基準に基づく金額の推計には依然として様々な不明確さがあると明確に述べています。このことは、定率による推計が完全に否定されるという意味ではありませんが、推計額を減らせる可能性があることを意味します。

    また、直近の2024年10月4日の判決(X B 105/23)では、推計の不確実性を踏まえて、連邦財務裁判所が上訴を認めている事案も出てきています。

    1. E-車両に関する総額リスト価格と減価償却の税制改正

    連邦参議院は2025年7月11日、「ドイツ経済拠点強化のための投資即時プログラムに関する法律」(取得番号249194)に同意しました。これにより、CO2排出のない自動車(例:純粋な電気自動車や水素車)の税務上の取り扱いが変更されます。具体的には総額リスト価格と減価償却の扱いが変わります。

    従業員への貸与に伴う金銭的利益(インカインド)

    雇用主が従業員にCO2排出のない社用車を私的利用も認めて貸与した場合、課税対象となる給与として現物給与が発生します。

    数年前から以下が認められています:

    • 1%ルールで金銭的利益を算出する際、総額リスト価格(BLP)を4分の1にできる
    • 走行記録簿方式を適用する場合、減価償却費(AfA)やリース料も相応に減額できる

    ただし、これには車両の総額リスト価格が一定の限度額を超えないことが条件です。この限度額は近年引き上げられてきました:

    • 2018年12月31日以降の取得:60,000ユーロ
    • 2023年12月31日以降の取得:70,000ユーロ
    • 2025年6月30日以降の取得:100,000ユーロ

    限度額を超える場合は、算定基礎として総額リスト価格の半分を用います。引き上げ後の限度額は2025年6月30日以降に取得した車両に初めて適用されます。

    特に社用車では、取得時期は「従業員に私的利用目的で初めて貸与された日」とみなされます(財務省通達 2014年6月5日、番号106294)。

    例:

    • 雇用主Aが2025年1月1日から従業員BにBLP 98,000ユーロのE-社用車を貸与。
      → この場合、当該日は限度額70,000ユーロを超えているため、算定基礎は半額BLP。

    例:

    • 雇用主Aが2025年8月1日から従業員CにBLP 98,000ユーロのE-社用車を初めて貸与。この車両は2025年6月に購入され、プール車として業務専用で使用されていた。
      → この場合は、2025年7月1日から限度額が100,000ユーロに引き上げられているため、算定基礎は4分の1BLPでよい。

    なお、付随する消費税(付加価値税)に関しては、E-車両であっても常に満額のBLPが基礎となります。

    E-車両に対する減価償却の優遇

    さらに、立法者は所得税法(EStG)第7条第2a項に、CO2排出のない電気自動車に対する追加の償却制度を導入しました。対象は2025年7月1日から2027年12月31日までに新規取得した車両です(中古車は対象外)。

    対象車両については以下の算術的・逓減法による特別償却が可能です:

    • 取得年:75%
    • 翌年:10%
    • 2年後:5%
    • 3年後:5%
    • 4年後:3%
    • 5年後:2%

    この新しい償却制度は2025年以降、車種(乗用車、電動商用車、トラック、バスなど)を問わず適用されます。目的は、企業や事業主にCO2排出ゼロ車両の導入を促すことです。

    一方で、従業員がこの特別償却を享受することはできません。従業員が走行記録簿方式で私的利用分を算出する場合や「コスト上限」が適用される場合に減価償却は関連しますが、その場合も現行通達では耐用年数8年間での定額(線形)償却とされ、雇用主が認められる特別償却は考慮されません。

    補足:

    従業員が自家用車で出張した場合に、実際の車両コストを経費として申告したり、雇用主が実費を非課税で精算する場合でも、コスト(減価償却を含む)は耐用年数に応じて期間配分する必要があります(連邦税務裁判所判決 2015年9月3日、VI R 27/14)。

    1. 自営業と雇用の間の曖昧な境界線

    業務関係をどのように具体的に構築するかは多様であり、実務上それを「雇用」か「自営業」かに明確に分類するのはしばしば困難です。そのため、社会保険料の追徴課税(加算金付き)を避けるには、早めに慎重かつ的確な判断が求められます。

    背景

    建設業では昔から偽装自営業が知られていましたが、最近では旅行添乗員、清掃員、フィットネストレーナー、介護士、出版社、運送業、IT業界でも増加しており、「発注者」は保険料を支払っていません。追徴金や利息、労働保護に関する訴訟のリスクがあるため、発注者は早めに就労形態を確認する必要があります。

    発注者・受注者の双方にとって、自営業か雇用関係かの区別は必ずしも明確ではありません。特に問題となるのは、社会保険法・税法・労働法における判断基準が一致していないことです。

    まず「本物の」自営業者とは、複数の顧客を持ち、どの仕事をどの条件で引き受けるかを自分で決め、いつ・どこで・どのように働くかも自由に決められる人です。多くの場合、自分のオフィスや設備を持っています。

    一方で「本物の」従業員は、雇用契約に基づき、雇用主の指示に従って労働時間や労働力を提供する義務を負います。特に勤務時間、勤務地、業務遂行の条件について雇用主の指揮命令を受けます。

    留意点: 

    この「両極」の間には広いグレーゾーンがあり、年金保険の調査官や社会裁判所の裁判官は、全体的な状況を見て判断します。焦点となるのは「事業上の意思決定の自由」と「事業リスク」です。

    判断基準 :

    個々のケースでは総合的な事情が重要ですが、典型的には次の点が判断基準となります:

    • 指揮命令従属性:発注者が業務の時間、場所、内容を具体的に指示しているか?
    • 組織への組み込み:受注者は発注者の資源を利用しているのか、自前の資源を使っているのか?また発注者の組織にどの程度組み込まれているか?
    • 事業リスク:受注者自身が経済的リスクを負っているか?

    留意点: 

    特に、受注者が従業員と同じ業務を行っている場合、あるいは以前に従業員として同じ会社で働いていた場合には、裁判所は偽装自営業と判断しやすくなります。加えて、受注者が自分自身で従業員を雇っていない場合は、偽装とみなされる可能性がさらに高まります。

    要点: 

    契約は形式的に正しく整備すべきですが、偽装自営業かどうかは契約書の名称ではなく、その実際の運用に基づいて判断されます。

    偽装自営業の結果

    最大の問題は社会保険料の負担義務であり、発注者にとって深刻な結果をもたらします。原則として「就労開始時」から適用され、後から判明した場合でも遡及します。これにより、多額の追徴金や延滞金、さらには刑事罰につながる可能性があります。

    身分確認

    被用者か自営業者かの法的確実性を得られるのは、**身分確認手続(SGB IV §7a)**だけです。これは発注者・受注者のいずれからでも申請可能です。

    実務上のヒント: 

    契約開始時だけでなく、長期的な業務関係においても状況が変化する可能性があるため、定期的に法的に見直すことが重要です。

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    ドイツ税務のアップデート2025年6月

    1. 個人事業主から有限会社への分社化に伴う不動産譲渡税の優遇措置
    2. 車両のプライベート使用の蓋然性に基づく証明
    3. フィットネススタジオの会員費に関する所得税法上の取り扱い
    4. 事業承継目的の会社持分の無償譲渡に対する給与所得課税の是非

    1. 個人事業主から有限会社への分社化に伴う不動産譲渡税の優遇措置

    個人事業主が事業用不動産を含む事業を新たに設立した有限会社に分社化(スピンオフ)する場合、この手続きは不動産譲渡税における「企業グループ条項」により税優遇の対象となり得ると、ドイツ連邦財務裁判所(BFH)は判断しました。ただし、5年間の保有継続期間に注意が必要です。

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    ドイツ税務のアップデート2025年4月

    1. 取得原価となる資本的支出:マンションの例
    2. 扶養費の支払い:現金での支払いは税務上認められなくなります
    3. 従業員の出張:特別前払リース料の期間按分
    4. 保護者の方へ:2025年から、子どもの保育費の税額控除が拡大されます

    1. 取得原価となる資本的支出:マンションの例

      ドイツ所得税法(EStG)第6条第1項第1a号によると、建物の取得から3年以内に修繕や更新が行われ、その純支出額が建物本体の取得費用の15%を超える場合、当該支出は建物の取得原価に分類されます。取得原価に分類された場合は、支出年度に全額費用計上することはできず、建物の減価償却期間にわたって費用計上されることになります。ヘッセン州財政裁判所は、区分所有マンションについては2つの特別な考慮事項があることを指摘しています。

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      トランプ関税2.0

      米国の関税政策は日々変化しており、世界中がその動向に注目している。本稿では、3月12日時点で発表されている関税措置を個別に考察し、今後の展望について解説する。

      (さらに…)
      HLS Global expands to UAE

      HLSグローバル、ドバイに子会社を設立、UAE進出のお知らせ

      日本、東京/アラブ首長国連邦、ドバイ 国際会計、税務、ビジネスアドバイザリーのリーディングカンパニーであるHLS Global Co., Ltd. (以下)は、アラブ首長国連邦(以下)に進出を決定しました。UAEのドバイに子会社 HLSGL Management Consultancies LLC(以下、)を設立し、グローバル進出による規模拡大を発表いたします。HLS-Global UAE の設立は、同地域の日系および多国籍企業に卓越したサービスを提供するという当事務所のコミットメントにおける重要なマイルストーンとなります。

      (さらに…)

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