ドイツ税務のアップデート2026年7月
- 助成金・補助金制度 2026年:企業が今知っておくべきプログラム
- 税務調査とタックスヘイブン:企業が今注意すべきポイント
- ドイツにおける持株会社の活用と税務上の留意点
1. 助成金・補助金制度 2026年:企業が今知っておくべきプログラム
革新的な企業は、研究開発税制による支援だけでなく、さまざまな補助金・融資制度を活用することができます。研究開発、デジタル化、エネルギー効率化、気候保護への投資を支援する多くの制度が用意されています。助成制度の全体像を把握しておくことで、企業はプロジェクトを大きな公的支援を受けながら進めることが可能になります。
KMU-innovativが次の募集ラウンドを開始
助成プログラム「KMU-innovativ」は、特に革新性の高い技術開発に取り組む中小企業を支援する制度です。対象となる分野には、医療技術、情報技術、気候・エネルギー、バイオエコノミー、新素材などが含まれます。
現在の募集ラウンドでは、2026年10月15日までプロジェクト概要書を提出することができます。プロジェクト概要が肯定的に評価された後、正式な申請手続きに進むことができます。なお、企業は、原則として、助成の承認を受けるまではプロジェクトを開始してはならない点に注意が必要です。
プロジェクトの内容や企業規模によっては、最大80%までの補助金を受けられる可能性があります。特に、人件費、材料費、共通費、外部サービス費、投資費用などが助成対象となります。
研究開発税制は引き続き重要な支援手段
研究開発税制は、2020年の導入以降、革新的な企業にとって最も重要な支援制度の一つとなっています。この制度は、企業の規模や業種を問わず利用でき、基礎研究、産業研究、実験的開発のプロジェクトに活用することができます。
税制優遇の対象となるのは、主に社内の研究開発担当者に係る人件費や、一定の外部研究委託費です。優遇措置を受けるためには、研究開発税制認証機関(BSFZ)による認証が必要です。
承認された研究開発税額控除は、次回の所得税または法人税の課税手続きにおいて考慮されます。控除額が確定税額を上回る場合には、その差額が払い戻されます。
この制度は、赤字企業や、まだ納税額がない、または少額にとどまるスタートアップ企業にとっても特に有用です。
2022年のプロジェクトに関する期限に注意
2022年に助成対象となる費用が発生した研究開発プロジェクトについては、重要な期限があります。必要となるBSFZの認証は、遅くとも2026年12月31日までに申請しなければなりません。この期限を過ぎて申請した場合、該当する費用は考慮されなくなります。
なお、対象となる研究プロジェクトは、早くとも2020年1月1日以降に開始されたものである必要があります。
連邦産業・気候保護助成制度が再開
連邦産業・気候保護助成制度(BIK)は、気候に配慮した生産プロセス、脱炭素化措置、研究・イノベーションプロジェクトへの投資を支援する制度です。この制度は、特に産業分野の中堅企業を対象としており、投資プロジェクトと研究開発プロジェクトの双方を対象としています。
一時的に利用できない期間がありましたが、2026年1月初めに第2回募集が公表されました。企業は、産業の脱炭素化、ならびにCO₂の回収・利用・貯留に関するプロジェクト概要書を提出することができました。助成額の上限は、モジュールに応じて、1プロジェクトあたり最大3,500万ユーロです。
一部の提出期限はすでに終了していますが、企業は今後の制度の動向を引き続き注視すべきです。助成額が大きく、産業分野における気候保護が長期的に重要な政策課題であることから、今後も追加の募集が行われる可能性があります。
エネルギー・資源効率化は引き続き重点分野
連邦経済分野エネルギー・資源効率化助成制度(EEW)は、企業のエネルギー消費量および資源消費量を削減するための投資を支援する制度です。
現行の助成指針の施行以降、助成条件は大幅に簡素化されています。特に中小企業については、新たな基礎助成により、助成金へのアクセスが容易になっています。さらに、電化、再生可能エネルギーの利用、排熱利用、グリーン水素の利用に関するプロジェクトについて、追加的なインセンティブが設けられています。
助成額の上限も引き上げられました。大規模なプロジェクトについては、現在、最大2,000万ユーロまでの助成を受けられる可能性があります。
KfWがデジタル化とイノベーションを支援
KfWは、2025年7月以降、デジタル化・イノベーションプロジェクト向けの新たなERP支援融資を提供しています。これらのプログラムは、年間売上高5億ユーロ以下の企業を対象としており、最大2,500万ユーロまでの資金調達を可能にします。
助成対象には、ITインフラ、デジタル業務プロセス、ソフトウェアソリューション、ネットワーク、ITセキュリティ、デジタル分野における従業員研修などへの投資が含まれます。
複数の助成段階が設けられているため、初期的なデジタル化の取り組みから高度なイノベーションプロジェクトまで、幅広く支援を受けることができます。
助成制度の全体像を把握することが重要
助成制度には多くの選択肢があるため、定期的に利用可能性を確認することが有益です。最初の情報収集には、連邦経済・エネルギー省の助成データベースが役立ちます。同データベースでは、連邦、州、欧州連合の助成プログラムに関する情報や、助成要件、申請手続きに関する案内を確認できます。
また、起業家や創業予定者向けにも、適切な助成制度や追加的な相談支援に関する情報が掲載されています。助成金を早い段階から事業計画に組み込むことで、企業は投資をより計画的に資金調達し、自社の競争力を持続的に高めることができます。
2. 税務調査とタックスヘイブン:企業が今注意すべきポイント
2027年以降、税務調査における新たな企業規模区分が適用されます。同時に、特定の国・地域との取引に関する税務上のルールも厳格化されています。そのため、企業にとっては、この2つの動向を正確に把握することが重要です。いずれも、税務調査リスクや税負担に大きな影響を及ぼす可能性があります。
2027年から税務調査における新たな企業規模区分が適用
企業は、税務調査の対象区分として、複数の規模区分に分類されます。この分類においては、特に売上高、利益、事業の種類が重要な判断要素となります。そして、この区分は、税務調査を受ける可能性に大きく影響します。
2027年1月1日から、税務当局の第25次調査期間が開始されます。これに伴い、連邦財務省は大規模企業に該当するための基準値を見直しました。これまでぎりぎり大規模企業に該当していた企業については、売上高や利益に大きな変動がない場合、今後は中規模企業に分類される可能性があります。
この変更は、実務上大きな影響を及ぼす可能性があります。大規模企業は、小規模な企業と比べて、税務調査を受ける頻度が大幅に高いためです。直近の統計によれば、2024年における全企業の平均税務調査率は1.6%でした。一方、大規模企業の調査率は29.6%、中規模企業は18.5%でした。小規模企業の調査率は2.7%、零細企業ではわずか0.7%にとどまっています。
したがって、対象となる企業にとっては、新たな分類により税務調査リスクが低下する可能性があります。
タックスヘイブンとの取引に関する規制強化
いわゆる非協力的な税務管轄地域との取引関係については、引き続き特に注意が必要です。その根拠となるのが、タックスヘイブン対策法です。対象となる国・地域は、税務目的における非協力的国・地域に関するEUリストを基準としており、このリストは定期的に更新されています。対象には、例えばパナマやロシアなどが含まれます。
企業がこのような国・地域と取引を行う場合、重大な税務上の影響が生じる可能性があります。一定の場合には、本来、租税条約により低い税率が適用される場合であっても、15%の源泉税が課されます。さらに、特定の取引に関連する事業費用が、税務上損金算入できなくなる可能性もあります。また、外国子会社合算課税も強化されており、これらの地域から生じる所得が、より早い段階でドイツにおいて課税される可能性があります。
加えて、文書化義務および協力義務も厳格化されています。そのため、企業は、このような国・地域との取引関係について、特に慎重に証明資料を整備し、継続的に確認する必要があります。
なぜ企業は今、自社の体制を確認すべきか
税務調査における新たな企業規模区分と、国際取引に関する規制強化の双方は、税務当局が調査・管理体制をさらに高度化していることを示しています。
そのため、企業は、自社が今後どの規模区分に分類されるのか、また既存の国際取引関係がタックスヘイブン対策法の対象となる可能性があるのかを、早い段階で確認すべきです。事前に分析を行うことで、税務リスクや追加的な事務負担を回避・軽減することができます。
3. ドイツにおける持株会社の活用と税務上の留意点
企業グループの構成をどのように設計するかは、税負担や将来の投資余力に大きく影響します。特に、複数の会社を保有する場合や、将来的な事業売却・再投資・事業承継を予定している場合には、持株会社(Holding)を活用することで、グループ内の利益を効率的に集約し、戦略的に活用できる可能性があります。
もっとも、持株会社はすべての企業にとって有利な万能の仕組みではありません。単に会社を増やせば税務メリットが生じるわけではなく、利益水準、投資計画、株主構成、将来の出口戦略などを踏まえて慎重に検討する必要があります。
また、持株会社には、株式保有を主目的とする純粋持株会社と、自らも事業活動を行う事業持株会社があります。どちらの形を採るべきかは、グループ全体の事業内容や管理方針によって異なります。
税務上の基本的な仕組み
ドイツでは、事業会社である資本会社から持株会社へ配当を行う場合、法人税上、その配当の95%が非課税となります。残りの5%は、損金不算入の事業費用とみなされ、課税対象となります。
その結果、配当を持株会社で受け取る場合の実効税負担は、概ね1.5%程度に抑えられます。これは、5%部分に対して法人税・営業税等を含む通常の実効税率が課されるためです。
一方、営業税については注意が必要です。配当について営業税上の免税を受けるためには、原則として課税期間の開始時点で15%以上の持分を保有している必要があります。この要件を満たさない場合には、法人税上は95%非課税であっても、営業税上は追加の税負担が生じる可能性があります。
なお、法人税上の95%非課税については、最低持分割合の要件は設けられていません。
個人株主に配当する場合の課税
持株会社に利益を留保している限り、個人株主レベルでの課税は発生しません。個人株主に課税が生じるのは、持株会社から個人へ配当を行った時点です。
自然人である株主が配当を受ける場合、原則として25%の源泉分離課税に各種付加税が加算されます。一定の要件を満たす場合には、部分所得課税方式が適用されることもあります。この場合、配当所得の60%が個人の累進税率で課税されます。
部分所得課税方式の適用には、通常、25%以上の持分を保有していること、または会社で職務に従事している場合には1%以上の持分を保有していることが必要です。
このように、持株会社の主な効果は、個人レベルでの課税を将来に繰り延べる点にあります。つまり、持株会社のメリットは、利益をすぐに個人へ配当する場合よりも、持株会社内に留保して再投資する場合に大きくなります。
株式譲渡益の取扱い
持株会社が子会社株式を売却して譲渡益を得た場合も、原則としてその95%が非課税となります。課税されるのは5%部分のみであるため、実効税負担は配当の場合と同様に、概ね1.5%程度にとどまります。
このため、将来的に子会社や事業会社の売却を予定している場合には、持株会社を通じて株式を保有することで、売却代金の大部分をグループ内に残し、次の投資や買収に活用しやすくなります。
ただし、10%未満の少数持分については注意が必要です。このような持分から生じる配当は全額課税対象となります。一方で、株式譲渡益については、引き続き95%非課税の対象となります。
持株会社の戦略的な意義
持株会社構造の大きなメリットは、グループ内で生じた利益や売却代金を、個人へ配当せずにグループ内に残せる点です。
例えば、事業会社で利益が発生した場合、その利益を持株会社に配当し、持株会社が別の事業への投資、子会社の買収、新規事業の立ち上げ、設備投資などに活用することができます。
また、事業会社を売却した場合でも、売却代金を個人株主に直接移すのではなく、持株会社に留保することで、比較的低い税負担で再投資資金を確保できます。
このように、持株会社は、単なる節税手段というよりも、グループ全体の資金を効率的に管理し、成長投資に回すための仕組みといえます。
活用が考えられる場面
持株会社の活用が特に検討されるのは、次のようなケースです。
- 事業会社で継続的に利益が出ている場合
- 利益を個人に配当せず、再投資に回したい場合
- 複数の子会社や投資先を保有する予定がある場合
- 将来的に事業売却やM&Aを予定している場合
- グループ全体で資金を集約して投資判断を行いたい場合
- 事業承継を計画的に進めたい場合
相続税や贈与税上の優遇措置が活用できるかどうかは、持株会社の具体的な設計や保有資産の内容によって異なります。そのため、事業承継目的で持株会社を設立する場合には、法人税だけでなく、相続税・贈与税の観点からも検討が必要です。
限界とリスク
持株会社にはメリットがある一方で、管理負担とコストも増加します。持株会社と事業会社は別法人であるため、それぞれについて会計帳簿、決算書、税務申告書を作成する必要があります。
そのため、会計・税務・法務に関する追加コストが発生します。構造にもよりますが、一般的には年間2,000ユーロから5,000ユーロ以上の維持コストが生じることもあります。
また、グループ内に複数の会社があっても、損益通算が自動的に認められるわけではありません。会社間で損益を通算するためには、税務上の連結制度に相当するOrganschaftの適用が必要となります。この制度を利用するには、財務的な統合、利益移転契約、少なくとも5年間の契約期間など、厳格な要件を満たす必要があります。
さらに、グループ会社間取引については、第三者間取引と同様の条件で行う必要があります。取引条件が不適切な場合には、隠れた利益配当とみなされるリスクがあります。また、租税回避防止規定である租税通則法第42条にも注意が必要です。
加えて、持株会社内に利益を留保していても、その資金を個人株主が自由に使えるわけではありません。個人で使用するためには、最終的に配当等により資金を引き出す必要があり、その時点で個人課税が発生します。
さらに、株主が国外へ転出する場合には、1%超の持分について出国税が問題となる可能性があります。EUまたはEEA域内への転出については納税猶予が認められる場合がありますが、国外移住を予定している株主がいる場合には、事前の検討が重要です。
まとめ
持株会社は、事業会社の利益や株式売却益を、比較的低い税負担でグループ内に集約し、再投資に活用できる有効な仕組みです。特に、利益をすぐに個人へ配当せず、将来の投資、買収、事業拡大、事業承継に活用したい場合には、大きなメリットが生じる可能性があります。
一方で、持株会社のメリットは、最終的な税金を完全に回避することではなく、主に課税を繰り延べ、再投資資金を効率的に確保する点にあります。したがって、後日すべての利益を個人に配当する場合には、最終的な税負担を含めて慎重にシミュレーションする必要があります。
持株会社を設立すべきかどうかは、利益水準、再投資計画、株主構成、事業売却の可能性、将来の相続・事業承継方針によって大きく異なります。導入を検討する際には、税務メリットだけでなく、管理コスト、実務負担、将来の出口戦略まで含めて、総合的に判断することが重要です。
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